東野圭吾『百夜行』


 ドラマをなんとなくしか見てなかったのは、綾瀬はるかの胡散臭さと山田孝之の陰気さ(隠し子問題で揺れてたし)と武田鉄也の粘っこさがなんか食傷気味だったから。
 本書を読んだらどれも上手いこと当てはまってるから焦る。先にドラマを見ちゃったので脳内キャストがテレビ版になっちゃうんだけど、山田孝之の桐原亮司、渡部篤郎の松浦、小出恵介の園村、奥貫薫の奈美江とか、結構ベストキャストかも。麻生祐未もいいですね。ドラマ版HPはコチラ
 小説の方は亮司と雪穂が完全な悪人で、周りのキャラが話を進めていく感じで、二人とも本性が見えない。むしろ二人に絡んだ(巻き込まれた)人たちが彼らについての物語を紡いでいくリレーみたいな感じ。二人はすごく象徴的な存在。それに対して、ドラマ版は二人の心情に沿っていたっぽい。小説版で外堀を埋めて、ドラマで天守閣の中を覗くみたいな感じがあって、今さらながらドラマが観たくなった。再放送しないかな。
 20年という時代を長々と綴っているんだけど、その時代が変わる度に、その時代時代の流行だとか事件だとかが反映されていて、なんだか自分が生まれた頃からの歴史を垣間見ているような感じで楽しい。つか巧いなあ、巧いのは当然知ってるけど、なんか気が利いてる。
 主人公の二人ともすごく悪い奴なんだけど、それを嫌悪しつつ同情しつつ、その二人が最後にはすごく悲しいラストで、亮司の最後にはしびれる。そこもそうか、みたいな。
 で、女は怖ええなあ、と思いましたよ。


 

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)