舞城王太郎『めくるめく』

jogantoru2006-01-08



 2006年最初に読んだのはやっぱり舞城王太郎で、ファウストVol.6 SIDE-Bに掲載の新作『めくるめく』だ。新年早々舞城の新作が読めるとはなかなかに景気がいい。
 主人公の林大樹は魔女っ子バイトをやっている高校三年生。魔女っ子『めくるめく』として大樹が紹介された古木恵はいじわるで家庭もなんだか複雑で…。
 初っ端の『魔女っ子バイト』というワードに「はあ?」となって「何?西尾維新トリビュート?」とか思ったけど、そこはやっぱり舞城。体も心も魔女っ子『めくるめく』に変化する大樹は「めくれくまくれくめくるめく!」の呪文を使って古木家に通いながらいろんな問題(古木家や自分自身の)に直面していくんだけど萌えの中にエグさがあってファンタジーの中にリアルがあって、最初に感じた違和感なんて吹き飛ばして描かれる深くて大事なテーマはやはり愛だったりする。
 大樹=めくが直面する最大の敵は具現化されたあらゆる憎悪。僕らの周りには大小いろんな《憎しみ》が渦巻いていて、隙あらばその憎しみは他者までも飲み込もうとする。憎しみの化学反応がまた新たな憎しみを生む。僕だって少なからず誰かに憎しみを持っていて、逆に誰かの憎悪が向けられている。だからってどうすることも出来ないんだけどそれを認識しているのとしていないのとでは全く違う。僕には魔法は使えないけどめくるめく憎しみ蠢く世界を生きていかなければならない。でも実際僕が魔法を使えるんなら憎たらしいあいつを即座にギャフンと言わしてやるんだが。


 とにかく年末年始に舞城新作を3本も読めて、お陰様で触発された僕の脳みそはフル回転凄まじくいい感じに動き始めました。次はいよいよ奈津川サーガ第三弾に期待がかかるってなわけです。さらに舞城が愛媛川十三と一緒に立ち上げた映像ユニット『REAL COFFEE』も楽しみだ。ぶっちゃけると参加したいし絡みたい。言うのはタダだし言霊ってもんを信じてますんで。