村上龍『半島を出よ』

jogantoru2005-11-17



 今からたった6年後、2011年の日本を描いた話。北朝鮮から上陸した高麗遠征軍と名乗る9人の兵士の手により福岡ドームが占拠、日本政府の対応の遅れに乗じて福岡が制圧される。という話。
 あまりに近未来な話だから有り得ない気がするけど、これが有り得る。リアルだ。それは日本が北朝鮮に攻め込まれるというリアルではなくて、日本自体に有事が起こった時の日本という国の脆さとか弱さとかそういったものが浮き出しにされている感じがするのだ。不景気だなんだと言っても安穏としている今の日本が、小さなひずみ一つで簡単に崩壊してしまうだろうリアルがここにある。
 

 そして、その高麗遠征軍に戦いを挑むのは住民コードすら持っていない社会不適合な少年たち。
 彼らは殺傷用ブーメランを操るタテノ、大量のカエルや毒ムカデを飼育しているシノハラ、高性能爆弾に精通するタケグチ、配管に詳しいヒノなど、都合のいいことにあらゆるスペシャリストが揃っている。彼らはイシハラという謎のおっさんに住居を提供されているんだけど、このイシハラは『昭和歌謡大全集』のイシハラだ。なんとなく松田龍平でイメージしちゃうと全然違うんだけど49歳って設定だからじゃあ松田優作で考えたらこれはこれでありかと思う。
 右上の写真はカエルや毒ムカデを操るシノハラが「世界で最も美しい生き物」と語るデンドロバテス・バリアビリスというヤドクガエルの一種。実際この本の表紙にへばりついているのはデンドロバテス・リューコメラスという種のヤドクガエルだ。シノハラ曰わく『ヤドクガエルの毒は青酸カリの五千倍の強さで、コブラと比べると二百五十倍、サリンの二百十倍、ウミヘビの五十倍、VXガスの八倍、フグ毒の五倍の強さ』という。しかしヤドクガエルは中南米ジャングルから離れるとその毒性を失ってしまうらしい。
 ヤドクガエルのことを少し調べてみたら下記のブログを発見。これによれば日本でヤドクガエルを飼育してもダニを食べることによって毒性を持たせることが出来るのだとか。
【鯖田鮫蔵的批評…http://app.blog.livedoor.jp/sabatasamezo/tb.cgi/50153165
 確かにこのことをシノハラが知っていれば高麗遠征軍はヤドクガエルによって壊滅されていたかもしれない。相当あっけない結末になるけど。
 体の粘膜に毒を纏うことによって身を守り、また美しい色彩を手に入れたヤドクガエル。異物であるが故に、他者から排除されたが故に、何物にも染まらない美しさを得た、そんな考え方は安直なんだろうか。その存在の美しさにシノハラは惹かれたのではないだろうか。



 この話を日韓合作で映画化したらすごい大作になりそう。高麗遠征軍は韓流のみなさんにやってもらう。
 チョ・スリョン→イ・ビョンホン(もしくは原田泰造SHINJO神奈月
 キム・ヒャンモク→チェ・ジウ(もしくは松嶋菜々子神奈月
 ハン・スンジン→ヨン様(もしくは松尾貴史神奈月
 ()内は韓流スターに悉く断られた時の代役で、最悪全員を神奈月が演じればいいと思う。
 日本側も少年チームを年齢設定少し上げればいける。
 シノハラ→窪塚洋介、タテノ→柳楽優弥とか。柳楽くんはすごくブーメランが上手そうな顔をしている。象に乗るのも上手いけど。タケイは松尾スズキで、城戸総理役は小泉さんにやってもらって、若手官僚役に杉村太蔵とか小泉孝太郎とか、あと二代目裕次郎とか出せば話題性十分。イシハラは松田優作で。「オペレッタ狸御殿」の美空ひばりみたいに出しちゃえばいい。
 あ、なんかすごそう。村上龍これ狙ってねえか?
 で、僕も悪魔教の一人とかで出れたら嬉しい。



 でも、これを読んで国際社会の中の日本だとか、内閣の情けなさっぷりとか、財政破綻とか、いろいろ考えるようになってもう少しニュースをちゃんと見ようとか思う。
 それにしてもラストは圧巻でした。面白かった。

半島を出よ (上)

半島を出よ (上)

半島を出よ (下)

半島を出よ (下)