中島らも『ロカ』

jogantoru2005-06-26


 中島らも氏の本当の遺作と言える作品。作品のおそらく前半部分でしょうか、これから物語が転がり始めるだろうところで残念ながら中島らもさんが急逝されたために絶筆となっている。がくーん。もっと読みたい。先が知りたい。そう思っても知りえるはずもなく、誰にも続けることの出来ない。しかしながらこの突然分断された物語の中にはロック、ドラッグ、宗教、酒、思想。中島らもという破天荒なおっさんの果てしない頭ん中が垣間見られるような、最期に喋りつくそうとしていたかのような気にさえなる。
 主人公の小歩危ルカは68歳の作家。過去の印税収入で筆を置いてからはホテルに住み、酒を飲み、気が向くとツインネックのギター”ロカ”を担いで街に出る。
 この作品は中島らもが『近未来私小説』と謳っているだけあって、主人公・小歩危ルカを見ているとまさしく中島らもが生きていて、あと十数年経っていたらこんなジジイになっていたんじゃないだろうかと思える。そして、こんなジジイになれたらかっこいいなと思う。
 文中のルカの『まだ死ぬわけにはいかん』みたいな言葉があって、それがまたキュンとくるしグッとくる。
 次は完成した方の遺作『酒気帯び車椅子』を読みたい。今から1ヶ月後の7月26日が命日です。


 

ロカ

ロカ