Kamzine

 通勤時など電車内で立っているのに器用に片手で新聞を読んだり、親指で器用にページめくりつつ文庫本なんかを読んでる人を見ると「あーあ、器用損してんなおい」とか思う。もっとその器用を他に生かせよと思う。チャッチャッと腹部縫合手術したれよと思う。俺は片手でページをめくってると親指の付根んところのスジがピキーンと攣ってしまうので、ページをめくる時は電車の縦揺れと横揺れを計算に入れ一瞬吊革から手を離し両手でサッパッパッとページをめくる。ここで電車がガタンとくると俺は「のっくっく」とぐらついてこけそうになるけど大概は上手いこと吊革に掴まって「あぶねーあぶねーあぶねー」とギリギリを楽しんだりする。電車ん中で「わっとっと」みたいになって座ってる人んところになだれ込むオッサンとかは取締役だろうと弁護士だろうと役所広司だろうとマヌーケだ。
 だから俺はなるべくミステイクをゼロに近付けるために立ってる時は本を読まない。
 でもそうすると暇である。i-PODなんて高尚な物を持ってない俺はガタゴトンという音を聞きながら中吊りでも眺めるしかないのだ。


 で、最近どうしても気になる中吊りがある。全面黄色のその中吊りが気になって仕方ない。


 
 大人が楽しむ月刊総合エンターテインメント誌『Kamzine カムジン』だ。
 あー新しい雑誌かぁ、などと甘くみたら大間違いだ。


 特集 郷ひろみ大研究 ムーブメントの先駆者が送るストイック人生。


 新連載 森進一物語 胸中を激白!


 このW離婚ボーイ企画2本だけでも相当面白そうなんだけど、さらには美川憲一の新宿コマ公演の楽屋訪問。メイン対談に森繁久弥×久世光彦TOKIOライブレポート。とりあえず載せとけって感じのイ・ビョンホンと盛り沢山。大人はこういうのを楽しむらしいです。しかも『昭和50年を懐かしむ』なるものすごく心寂しい感じの特集記事もあるよう。俺まだ赤子ですからね。もろ赤子。まろ赤子。まあ、ちょっとは気になったりもしてるんですが、コンビニでは見かけなかったな。
 ちなみに『Kamzine』は『おとなを幸せにする[歌・夢・人]マガジン』ということで『歌夢人』をかっこつけて『Kamzine』としているらしい。
 田舎の方の寂れたスナックによくある『来夢来人 ライムライト』とか、『村さ来』とかのネーミングと近い雰囲気を感じてしまうのはやっぱ年代からくるのだろうか。


 カムジン、カムジンと書いていたらテムジンのことを思い出した。テムジンはモンゴルを統一したチンギス=ハーンの名前だ。チンギス=ハーンとは呼称である。チンギスの意味は分かんないけどハーンは王の称号である。あ、でもテムジンのことを思い出したって言っても俺はテムジンの昔の友達とか元同級生とかではなくて、だから思い出したっていうか頭によぎっただけである。ごめんね、なんかえらそうにしちゃって。かむじんしてください。うーん、厳しい。