舞城王太郎『世界は密室でできている。』

jogantoru2005-04-26

 再読。このところ舞城再読フェスタ。いい小説というのはちょっと細部忘れてるくらいで再読すると俄然いい。新しい発見と驚きがその深みを増す。
 『煙か土か食い物』『暗闇の中に子供』の奈津川サーガ2作に続いて刊行された今作は奈津川サーガ番外編チック。主人公由紀夫の友達は『煙か土か食い物』にも登場した名探偵ルンババ12こと番場潤二郎。次々出て来る密室をばっさばっさ見破って解決していくルンババは頭脳明晰用意周到天才気質だけど自分のお姉ちゃんの死の謎が解けなくてそれがルンババ自身を密室に閉じ込める。
 「密室」という単語はすごくミステリー的で、それは火曜サスペンスやキオスクに置いてあるミステリー小説なイメージがあり偏見がちに遠慮してたけど、これ読んで俺の先入観はなくなった。舞城のミステリーはミステリーだけでなく人間が生きていて由紀夫やルンババの成長があって恋があって、でもそれは陳腐でなく俺ら目線でリアルな世界だからこれだけ読み続けられる。俺は舞城のあとに一時期清涼院流水を読んだけど薄っぺらい感じがして断念した。単純に俺の好みが舞城にばちこーんハマっただけかもしれないけどそういうのに出会えたのがやはり嬉しい。
 本書ラストで由紀夫のいう言葉が当たり前なことだけど心に響く。舞城には当たり前なことを直球ド真ん中にさらり言い放って「そういうもんやろが」「うん。そうなんよね」と目が醒める感じがたまらないし俺の人生4コマのオチも俺ん中で見事オチてくれれば俺はそれで満足だ。