『サーチエンジン・システムクラッシュ』宮沢章夫

jogantoru2005-02-16

 著者の宮沢章夫という人は演劇の世界では相当有名な人なんだと思う。なんでここで「なんだと思う」っていう表現を用いるのかっていうと実際俺は最近まで全然面識はなく、っつうか今もないけど、なんとなく名前は知ってたけどそれは今思うと昔「SPA」でニュースな女たちを書いてた中森明夫とイメージがかぶってたのと、なんとなく名前から想像する顔は篠沢教授だったりする。これはほんと名前だけのイメージだが浮かんじゃうものは仕方ない。
 宮沢章夫さんは遊園地再生事業団http://www.u-ench.com/という劇団?を主宰していて、新作の『トーキョー/不在/ハムレット』には知り合いの岸建太朗さんが出演してて「あー観に行こうかなー、でも4000円高いかもなー」とか思ってるうちに終わってた。この公演の準備公演というのが麻布ディプラッツで10月に行われたとかタイトルに「トーキョー」って言葉があったりで「お」とか思ったりもしてたんだけど結局観れなかった。
 でも本書『サーチエンジン・システムクラッシュ』を読んで、やっぱり観るべきだったと後悔している。

 かつてゼミで一緒だった男が殺人を犯す。その男、首藤と卒業後に偶然一度だけあったことのある池袋にある風俗店「アブノーマル・レッド」。主人公はその店を探していくうちに池袋の街を彷徨い、様々な事象に翻弄され、自分が何をしているのか、何を探しているのか、何処へ向かっているのか、自分は果たして誰なのか、どんどんすべてが分からなくなっていく。
 主人公の脳裏にその「虚学」というゼミの先生の言葉が蘇る。

「生きているのか、死んでいるのかわからない。その曖昧さに耐えられるか?」

 何もなくただ生きている日々は本当生きてるのか死んでるのか分かんないし、確かに生きてんのか死んでんのか分かんない人っているし。それはその人を否定してるんじゃなくそれが幸か不幸かってのは別にして俺には出来ないししたくないけど、それを受容するってやり方もあるかと思う。
 人生ってのはどうやっても白か黒はっきりさせることなんて出来なくてすごく曖昧だ。俺は白でも黒でも赤でもなく曖昧な灰色の中で少しでも明るい部分を求めたりしながらなんとなく漂っていたいような人間であって、でもそれが人間なんだし俺なんだと思う。もうこれしょうがないじゃんと。

 なんか支離滅裂になってきた。
 とにかくこの主人公は池袋という街でいろんな人の間をただただ彷徨っていて、それは「人生」だとか「生きる」ということを表しているかのよう。ラストはあまりにあっけないんだけど、それこそが「生きているのか、死んでいるのかわからない。その曖昧さに耐えられるか?」って言ってるようなほんと曖昧なリアルであってすごくいろいろ考えさせられた。