阿部和重『グランド・フィナーレ』

阿部和重の作品は初期の「アメリカの夜」と「インディヴィジュアル・プロジェクション」くらいしか読んでなくて、それ以降なんとなく食わず嫌いになってた。なんとなくなんだけど。で、今回は他の作品目当てで「群像」の12月号を読んだんだけど目当てだった作品が頗る退屈で投げ出して、代わりに巻頭に掲載されていたこの作品に目を通した。
面白かった。
自身のロリコンが原因で家庭崩壊した男が知人の頼みによってある二人の少女のためだけに演劇をつくりあげることになる。といった話。ロリコンって言ってもディープな性犯罪者みたいなタイプではなく「ああロリコンすねそれは」という軽いロリコン。そこがなんかリアル。隣の人のPC覗いたらロリコン写真だらけのフォルダが見つかったよ、まあいいか、ってくらいの。ありそうだもん。それよか俺の向かいの席の人の壁紙は見知らぬキャバ嬢みたいな写真で微妙すぎてコメントに困る。だからコメントしない。つうか仕事中は喋らないんで俺。
なんかこういう話って主人公が再生していったりする話とかかんーとか思うけど、この話はちょっと違う。再生すんのかしないのか分かんない。二人の少女を前にして淡い欲望がびゅるんと出ちゃうのか、二人のために本当にちゃんとするのか、どっち?って感じ。まあ俺の読みが甘いのかもだけど、そんな感じ。読み進めて行って最後の一行読んで「あれ?終わったの?」って放り投げられたような。後ろの方に後半部分が載ってんじゃねえの?と群像めくっちゃってる俺がいた。ただその放り投げ具合がちょうどいいというか、「もうちょっと深く読みたかったなー」など思ってるうちに実は物語がすごく心に引っ掛かって考えさせられてよい。
この作品は第132回芥川賞にノミネートされた。読んでる途中で発表があったので何かちょっと嬉しかったりする。芥川賞取ったからってどうなのよーとか思うけど取ったら取ったでいいんじゃないかと思う。選考は明日13日だ。

芥川賞候補作】
阿部和重グランド・フィナーレ」▽石黒達昌「目をとじるまでの短かい間」▽井村恭一「不在の姉」▽白岩玄野ブタ。をプロデュース」▽田口賢司「メロウ1983」▽中島たい子「漢方小説」▽山崎ナオコーラ人のセックスを笑うな
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