『好き好き大好き超愛してる。』舞城王太郎

好き好き大好き超愛してる

芥川賞候補にもなった今作。群像に掲載された時から何度も読んでるんだけど、単行本となるとまた趣きも違ってくるわけで。しかも同時収録の『ドリルホール・イン・マイ・ブレイン』とで作品ごとに紙が違くて、フォントも違う。粋。で、2作品の間にはイラストギャラリーまであって、なんかもう素敵。最高。尊敬。畏怖。そんな感じ。
芥川賞逃して正解の『好き好き大好き超愛してる。』は恋人を癌で失った主人公のメインのストーリーがあって、その間にその主人公(作家である)が書いた短編が織り込まれてる。この短編が最高で、人間の体内に寄生するASMAという虫の話、神と戦うアダムとイブの話、夢を壊したり直したりすることになる少年の話、どれもこれも珠玉。すごく珠玉。先日読んだ芥川賞の寸評に『「世界の中心で、愛を叫ぶ」を意識しつつ、そんなん死とかすげーあっけねーもんなんだよ、みんなであんな話で泣いてんじゃねーよ、みたいな話で、もちろん「世界の〜」より優れている。』みたいなのがあって、うん、なるほどなーとか思った。感化されやすい俺。
ドリルホール・イン・マイ・ブレイン』は家を襲ってきた母ちゃんの愛人に頭にプラスドライバーをガキーンと刺されちゃった主人公の話で、これは「ファウスト」で読んだ時に「うわーやられたー」となって、やっぱ再度読んだらこれもすごくいい。これを映像化出来る人いたらしてほしい。この話には俺が大好きな要素がたっぷり詰まってて、秋に公演するやぶさめハンサムボーイズの芝居でも多分に影響を受けてます。
舞城作品で描かれる愛ってどれもきれいごとじゃなくてリアルで、それでいて大袈裟でなくすごく、くる。また何度も再読するだろう本である。