競争女王の話


 先日、ひょんなことからレースクイーンとお会いする機会がありまして。


 男子というのはレースクイーンだとか制服だとかには過敏なわけでして、レースクイーンがやってくるとの情報に我々は「おおっ!」となりました。レースクイーンなんて生で見たことないですから。
 さらに「可愛いですよ」の声に「おおおっ!」となり、すると背後から「遅れてすいませーん」との声。
 振り返った我々は「…ぉお」となった。




 猪八戒がいた。



 背がスラッとして髪の長い、猪八戒がいた。



 猪八戒は唐突に言った。
「すいません、すっぴんで!」
 そして携帯を開いて見せてきた。




 美人が映っていた。


 化けるんですね。
 


 どんな証明写真だっつの。
 とはいえ我々の前にいるのは地味な顔立ちの猪八戒である。
 どうにも結びつかん。


 そこで我々はある結論にたどり着いた。


 この人はレースクイーンといっても普通のレースクイーンではないのだ。そうだ、豚のレースに出ているんだ。ベイブみたいな感じなのだ。観たことないけど。そんな豚のレースでGIとか勝っちゃうような女傑なのだ。女王だ。豚のレースの女王なんだ。ンゴッ!ンゴッ!ンゴッ!


 そんな豚女王はビニール袋に入った川魚を手土産に持っていました。