僕がエビちゃんになった日

jogantoru2006-06-08



 朝起きたら僕はエビちゃんになっていてワイフは僕を見て悲鳴をあげる。いくら普段エビちゃんになりたがってたからと言っても何の前触れもなくエビちゃん化していたら、そら驚愕ですよ。しかも本家エビちゃんとはちょっと違うというか全然違う。つうかこっちが本家だ。ロブスターボーイ参上。
 エビちゃんは「私は焼かない」と言っていたけど僕だって言ってやる。


 私は焼かない。



 むしろ、茹でる。


 この時期のエビちゃんは身の締まり具合バッチリのぶりんぶりんである。僕は少林寺のリーリンチェイよろしく熱湯に腕を突っ込んで「ぐぬああああ」待つこと数分、僕のクローは苦労の甲斐あって見事な茹でたてぶりんぶりん。手首のあたりからハサミを入れて真っ赤な甲羅をパキパキ剥がして自分の右手にはぶりつく。甲殻類を食す時の動詞は「はぶる」である。
 そんな自給自足カニバリズムを見つめるワイフもすっかり落ち着いていたので僕は爪の部分をぷりるん取り出して食べさせてあげる。
 僕の肉体を分かつこの行為こそ真の愛の証しなのだ。キリストは葡萄酒とパンだったけど、僕の方が高級なんだから、小銭ごときで裏切るなよ。
 食事を終える頃には僕の両手はすっかり無くなってしまったけど脇腹から小さな腕が左右三本ずつ生えてきていたから大丈夫。少しずつ使えるようになるんだろう。要は慣れだ。僕は小さな六本の腕を駆使してアシュラマンになってやる。


 すっかり満腹ヘイなのでソファに座り込んだら、目に入った僕のふくらはぎは程よい肉付きをしている。
 明日はローストチキンがいいかな。歩けなくなるけど。