髀肉の嘆

jogantoru2006-04-07



 三国志にある逸話の一つ。
 劉備がまだ根拠地を持てず、荊州劉表のもとに身を寄せていたときのこと。かわやに立った劉備は内股の贅肉がついていることにふと気付き「ああ、なんたることよ」と思わず落涙した。そして席に戻ると劉表に涙のあとを見つけられ、劉備は答えた。


「私はこれまで何年となく戦場を駆け回っておりましたため、凡そ股に肉の付くことなどなかったのですが、このところ馬に乗ることもなくなり、すっかり肉が付いてしまいました。月日の経つのは早く、老境もはや目前に迫ったというのに、今もって大志を遂げることもかなわない始末。あまりの不甲斐なさに、ついに涙を流してしまったのです」


 これを「髀肉の嘆」と云い、髀肉とは股の内側についた贅肉のこと。
 実力を発揮するチャンスに恵まれず、不遇な状況にあることを嘆いた言葉である。


 いくら才能があってもそれを発揮する場がなければ、それは宝の持ち腐れであって、そうなると宝どこらか性根まで腐ってくる。名作『摩天楼はバラ色に』で成功を夢見て田舎から出てきた主人公ブラントリー(マイケル・J・フォックス)は、未経験だというだけで就職の面接で門前払いされそうになり「チャンスすらくれないのかF**K!」とか叫ぶ。アメリカ版髀肉の嘆である。叫ぶあたりが陽気だアメリカン。でもアメリカンの髀肉には狂牛病ウィルスが怖いから食べないけど。食べ物じゃないし牛じゃないけど。
 ちなみに僕は中学生の頃『和製マイケル・J・フォックス』と自称してましたが何か?


 とはいえ、心に髀肉が付かないようにしないといけないなと思う。だからせっせと精進するけど、チャンスぐらいくれたっていいじゃねえかよ。たった15分で何が分かるんだっつの。
 なんてオーディションに落ちたりすると思います。


 あと、便所で自分の太股見ながら泣いてるオッサンって、ちょっと気持ち悪い。