スルツカヤ 岩に染み入る 蝉のコーエン
いよいよ注目のフィギュアスケート女子のショートプログラムが始まった。
荒川3位、村主4位、安藤8位。上々の滑り出しのようで何より。ああ、ダジャレさ。
それにしても、最近は見慣れちゃったからなんとも思わないけど、やっぱり村主章枝はバカ殿みたいな顔をしているし、荒川静香もよく見るとさかなくんや前田健に見えてくる。
それでも氷上でくるくる回ってる表情は素敵っぽく見えるから不思議だ。
たぶんくるくる回っているからだろう。
団扇の片面に鳥の絵を書いて、もう片面に鳥かごを書いてくるくるさせるとまるで鳥がかごに入っているように見える。くるくるには錯覚があるのだ。
僕は過去に数回しかスケートをしたことがない。
最後にスケートをしたのは小6の時だったと思う。
そして、僕の最後のスケートは、悲惨なものだったのだ。
僕はリンクすら見ることが出来なかった。
親戚と行った温泉旅行。そこにあったスケート場に行った僕は従兄弟たちときゃっきゃ言いながらスケート靴を履き、さあ滑ったるぜいと立ち上がった一歩踏み出したところ、
コケた。
左肘の骨が折れた。
楽しそうな声に溢れるスケート場の靴履き場(というのか分からないが)で僕はママンに肩を抱かれながら「痛いよう、痛いよう」と涙をポロポロ流していた。村主はSP後に「今回は楽しく五輪を過ごそうと思っているので、涙をなくしたい」との思いから涙をこらえたが、僕は堪えられなかった。彼女らはフィギュアだが、僕は「ふぃぎゃあああ!」という感じだった。
それ以来、スケートはしていない。
怖いから。
だから何度コケてもすぐに立ち上がってくるくる回ってる安藤ミキティには頑張って四回転サルコウしてもらいたいものだ。
朝から職場でもフィギュアの話題で持ちきりだった。
一人のオッサンが得意気に話しているのが聞こえてきた。
「安藤はダメだね、相当転んでたもんな。うん、俺ラジオで聞いてたから」
ラジオかよ!
聞いてどうすんだよ!
きっとおっさんはラジオから聞こえるフィギュアの実況を聞きながら、妄想を膨らましているに違いない。
きっと四回転ジャンプとかものすごい高さになってるから。
8メートルは跳んでるから。
そして迫り来るハリケーンみたいな風圧になってるよ。きっと。
そういうみんなの夢を乗せた四回転サルコウ。
そしておっさんの頭の中で「サルコウ」はやっぱり安直に「エテ公」に変換させているんだろうか。