同棲相手が死んだ夜

 去年の夏から一緒に暮らしてた。
 異変にはなんとなく気付いていた。
 もしかしたら死んでるのかなと。
 でも、もしかしたら動かないだけなのかなと。
 

 でも、彼はもう生き返らない。
 

 
 (九十九十九 享年?才/同棲期間1年3ヶ月)


 舞城の作品JDCトリビュート『九十九十九』の天才探偵と同じ名前のツクモジュウクは去年の冬も越して、このままだと風呂桶くらいの大きさまで成長して、おいおいは人間語も喋れるようになって僕はツクモの背に乗って那珂川を上って実家に帰ったりとかするんじゃねえかと思っていたけど、やはりどんな生き物にも寿命ってのがある。
 寿命だったのだ。
 と思いたい。
 実際はツクモは1週間ほど前から動かなくなっていた。
 冬眠?とか思ったけど去年してないし、そんなわけない。
 でも認めたくなかったのだ。


 たまにニュースなんかでおじいさんが死んじゃって、一緒に住んでいたおばあさんはそのまま生活してて、放置してたせいで異臭がしたり腐ったりで死体遺棄(でいいのか?)みたいな事件があるけど、あれって身近な死を認めたくなかった結果なのかもしれない。病院でとか事故でとか、そういう死は第三者から突き付けられるから認めざるを得ない気がするけど、いきなり目の前にそれがポンと出されたら認識能力が鈍くなるのか、嫌な事を拒否してしまうのか、なんだか分からなくてそのままにしてしまう。認めるのを何となく後回しにしてしまう。
 認めたら終わっちゃうから。
 僕も認めることを拒否していたんだと思う。


 「なんでザリガニで?」と思うかもしれないけど、結構凹んだのですよ。