『パッチギ!』
【監督・共同脚本】井筒和幸
【脚本】羽原大介
【出演】塩谷瞬(康介)/高岡蒼佑(アンソン)/沼尻えりか沢尻エリカ(キョンジャ)/楊原京子(桃子)/尾上寛之(チェドキ)/真木よう子(ガンジャ)/波岡一喜(モトキ)/余貴美子/ケンドーコバヤシ/加瀬亮/オダギリジョー(坂崎)
見始めて思ったのが、
「『嫌韓流』読まなきゃよかった」である。
僕は『嫌韓流』を読んで確実に考え方に偏重が出てしまっているので、在日を扱ったこの作品をどうにも斜めにしか観られないんじゃないか。そんな不安があった。
面白かった。
笑ったし、泣けた。
傑作だと思う。相当いい。いい作品には思想の云々とか偏見で云々とかないのだ。
いいものはいい。そう思う。
井筒監督はすごいんじゃなかろうか。と、初めて思った。井筒監督が他人の映画を辛口批評しまくってるのは好きなのだが、前に『ガチンコ』で「ガチンコ女優学院」ってのをやってたのがいまだに残っていて、その企画で残った子たちを主役に映画撮るって言ってたけど作ってないっぽいからだ。なんか当時から「うさんくさい」イメージが強く残っている。いや、『ガチンコ』に出てた人ってのは大抵「うさんくさい」イメージがついてしまっていて竹原慎二なんかその筆頭である。今じゃ竹原はガイア(パチンコ屋)のイメージキャラクターだもん。パチンコ屋のイメージキャラクターってのもよく分かんないけど。
でも、井筒監督はすごかった。ガチンコのことはさておき、すごい。前作『ゲロッパ!』も面白かったけど、『パッチギ!』には深さがある。そんでもって隙がない。脚本も音楽も役者も全部いい。同じ頃の映画ということで村上龍原作の映画『69-sixty nine-』の二番煎じみたいな言われ方もしてたけど、こっちの方が俄然いい。これを観ると『69』は軽いなあと。浅いなあと。
朝鮮半島の南北に流れるイムジン河。それをモチーフに南北分断の悲しみを歌ったフォーク・クルセダーズの『イムジン河』。当時発売中止になった歌。主人公の康介がラジオで歌う『イムジン河』をバックに様々な場面に様々な想いが紡がれていく。もう、号泣ですやんか。『悲しくてやりきれない』も絶妙。とにかく音楽が良くて、ちょっとフォーク聴きたくなる。ちょっとサントラ買いたくなってるし。ちょっとフォークギター弾きたくなってるし。
でも、やっぱり『嫌韓流』読んでおいてよかったのかも。思想的なものはやっぱり解んないけど、在日のこととか、歴史的な背景とか、そういうのを多少でも理解して観れた。結局は国と国の問題で、それに振り回されるのはいつも大衆で、そういうどうしようもない切なさとかやるせなさとかがあって、ラストにアンソンの見せる涙や、キョンジャの「バカ」って笑うとことか、最終的には「うん、ラブっていいよね」とすごくバカのような想いでちょっと笑顔な自分は気持ち悪いけど、最後にみんなが救われる感じがした。でもそういうのが説教臭いわけでも感傷的なわけでもなくて、すんなりと当たり前に受け入れられて、そこにいるすべての登場人物がいとおしく思える。
なんだかんだ言っても仕方ない気がする。なんかいい映画を「いい」とか「面白い」とかでしか褒められないってのは自分の語彙の無さにちょっと凹む。
ともかく今年ナンバー1かもしんない。あと6回は観れる。
いいパッチギいただきました。
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