石田衣良『アキハバラ@DEEP』

 

アキハバラ@DEEP

アキハバラ@DEEP

 石田衣良「街」を書くのが上手い。「池袋ウエストゲートパーク」ではタイトル通り池袋を、「4TEEN」では月島を、さそいて今作では秋葉原を書いているんだけど、どれもがその「街」を鮮明に浮き上がらせる。
 物語は秋葉原で小さなIT会社「アキハバラ@DEEP」を興した6人の若者。簡単にいえば5人のどこか病気を持ったオタクと1人のコスプレ喫茶の美少女。まるで「4TEEN」の少年あっちが大人になったかのように思えて何だか嬉しい。彼らは史上初のAI型のサーチエンジン「クルーク」を開発するが、それがIT業界の大物に目を付けられることになり、彼ら6人はその大企業相手に「明るいテロ」を仕掛けることになる。社会的弱者(しかし皆なんらかのスペシャリストだったりするけど)である6人と巨大企業という悪(と言い切ってしまおう)との戦いは痛快である。


 今、コミケに出店したネイサンズフランチャイジーオブジャパンのバイトちゃんが自身のブログに客のことを「みんな頑張ってバイトしています!まぁお客はみんなオタ」「大量オタ。これがぶぁぁぁぁあっているの。恐い!きもい!」などと書いた(しかもリアルタイム写真付き)事件が問題になってるけど、実際問題そういう見方はしてしまう。この事件の場合は「顧客に対して」の態度が出来てないというのが論点なんだと思うけど、ブログに書く書かないは別として電車男が流行ろうが中川翔子がオタクアイドルであろうが、リアルな「オタク」という存在はやはり近寄り難い存在ではある。それは「オタク」っていう言葉のイメージだけがどんどん先行してしまっていて、「オタク」の悪いイメージがどんどん増長してしまっているだけなのである。本書を読んでそういうのはいかんなと心持ちを改めてしまった僕には、誰にだってオタクな部分はあるわけだし突き詰めてる分偉いじゃんよとか思えてくる。←影響されやすい俺。


 アキハバラ@DEEPのメンバーが作ったサーチエンジン「クルーク」は次のようなコンセプトで作られた。
 『よいサーチで、よい人生を』
 なんかいい言葉だ。彼らは素晴らしい仲間をサーチし、自分たちの生きる人生を良きものとした。僕も人生をサーチしてサーチしてサーチして幸ある人生を掴みたい。
 あとやっぱ、早くメイド喫茶に行きたい。