『タナカヒロシのすべて』

jogantoru2005-05-30


【監督・脚本】田中誠
【出演】鳥肌実ユンソナ加賀まりこ高橋克実宮迫博之伊武雅刀市川実和子小島聖西田尚美矢沢心島田珠代手塚とおる、昭和のいるこいる、みのすけ三宅弘城鈴木みのる寺島進、他


 カツラ工場に勤める《日本一不器用な男》タナカヒロシ32歳は無趣味で恋人もいないし血尿に悩まされている。何の面白味もない淡々とした彼の人生は父親の急死を皮切りに大小さまざまな不幸によって崩れ落ちる。みたいな話。
 全般的に派手過ぎず地味過ぎずな分別ある感じだけど、これ主演が鳥肌実じゃなかったら成り立たなかったんじゃないかとも思う。無口で大人しいタナカヒロシという人間を、鳥肌実が演じることによって初めて成立するというか、主役としての存在感が出るというか。その一つ一つのリアクションに鳥肌実っぽさが垣間見られる。この人は『けものがれ、俺らの猿と』の時の印象が強くてああいうエキセントリックな役はそのまんまだけど安心するっつうか専売特許な感じだったけど、こういう静かな中にキ○ガイっぽさのある感じもいい。
 全体として淡々とした中にほのぼのしたエピソードがあって(とは言えそれはほとんど不幸なエピソードばかりだけど)、最後まで飽きないしちょっと心地いい。斬新なわけじゃなく地味でベタでちょっと古い感じ(今さらテルミン?とか)なんだけどそれもまたいい感じで。
 のいるこいる師匠の「しょうがないしょうがない」も聞けるし、高橋克実がカツラ工場の主任で自虐的にがんばってるし、加賀まりこってもう年寄りの役やるんだーとかいろいろ。
 役者では矢沢心がすごくよかった。今回はホテトル嬢の役だったんだけど、この人はほんと前向きな風俗嬢とか似合う。そんでいい事とか言えちゃうキャラで。この作品では一番のヒロインな感じがした。(つーか他の女性陣は加賀まりこ以外はなんとも薄っぺらい)
 ただ、これには俺の苦手な役者、ユンソナと宮迫が出てるのが気掛かりだった。
 だめなんだよね、この二人。特に宮迫が出て来るとテンションが下がる。『下妻物語』でもひどかったもん。なんつーか「俺おもろいやろ?」みたいな内から湧き出るアピールが。
 で、実際のところユンソナはまあ大丈夫だった。
 けど、やっぱり宮迫。ああ、もう、ムギイィィィ!ってなる。なんでこの人使うかな。うーん、どうにも芝居をしてる宮迫は受け入れられん。
 でもまあ、ラストのありえない感じとかもあるけど全体的に楽しめたからよしとしよう。エンディング曲もクレイジーケンバンド『シャリマール』だし。


 それよかこの映画、渋谷シネクイントで上映されてるんだけど、ありえないくらい行列だった。30分前に行って8Fから4Fまで階段にずらーって並んでた。
 なんで?
 鳥肌実ってそんな人気なん?
 そんなに大作でも話題作でもないし、それとも単純に観る映画がないのか?
 分からん。
 とりあえずお金と気持ちの余裕がある人は観てもいいんじゃないかと思う。なんか優しい感じの映画ではありますから。
  
 
 【公式HP】http://www.tanakahiroshi.net/