『ボーン・コレクター』

 最近は少しずつ観るようにしてるんだけど俺は洋画が苦手でちょっと敬遠気味。どうにもこうにも感情移入が出来ない。育ってきた環境が違うから好き嫌いは否めないなどとセロリかじりながら言いたいけれど俺はセロリは大嫌いだ。セロリ>洋画。だから洋画も少しは観るけど刑事物とかは観ない。その辺は『セブン』と『ポリスアカデミー』でお腹一杯なのだ。
 そんな俺だが前から気になってたのがこの『ボーン・コレクター』。何でかというと舞城王太郎煙か土か食い物』の中の一文にハッとしてグッときてパッとなったからだ。以下抜粋。四郎が襲われてる時の記述だ。


 俺の上に馬乗りになった男が笑い出した俺を見て殴るのを中断して小首を傾げる。どうせ俺のことをマゾヒストか何かだと思ったんだろう。違うんだ。俺は本当はハンニバル・レクターなんだ。正確に言えば映画版『ボーン・コレクター』のデンゼル・ワシントンなんだ。
 俺のモゴモゴ何か言いたそうな口の動きを見て馬乗り男はまた殴るのを中断する。「何だよ」。モゴモゴ。「何か言いてえことあるんかい」。モゴモゴ。「待てや」。男は俺の口に貼ったテープを剥がす。呼吸が楽になる。俺は喉に詰まった血を飲み込んで呼吸を整えて言う。『ボーン・コレクター』観たか?「あん?何やってか」と男。俺の声が聞こえないのだ。お前は『ボーン・コレクター』観たのか?「何やってか」。男が俺の声を聞き取ろうと俺の口元に耳を寄せる。俺は歯を剥く。俺は『ボーン・コレクター』のデンゼル!俺はハンニバル・ザ・カニバル! (舞城王太郎煙か土か食い物』)


 俺は本家デンゼルのこのシーンを観て「うおーほんまじゃ四郎ちゃん」と喜ぶ。舞城の作品はそういった映画や音楽からの引用がハマってて『阿修羅ガール』を読んだ時はこれまた敬遠してた『ビッグリボウスキ』(それまでは『びっくり!棒好き』というAVかと思ってた。嘘だ)を観て「うおーアイコの言った通りじゃん」と喜んだ。今はラフマニノフのピアノコンチェルト第三番がすごく聴いてみたかったりする。
 そんな不純な?気持ちで臨んだ『ボーン・コレクター』だけど面白かった。夜中の3時に観てんのにぐいぐい引き込まれーの、目ン玉ランラン輝きーので大満足。デンゼル・ワシントンすごくいいし、アンジェリーナ・ジョリーってこんな綺麗だったのね。かなりいい。犯人を追うサスペンスっぷりやら謎解き成功やったぜ解決と思ったのにぎゃあああドンデン返しっぷりだとか、いや単純に話が面白いのだ。
 最近『ボーン・コレクター』の続編『ボーン・スプレマシー』が公開されてたので観てみようかと思うが俺は「スプレマシーって何?」と頭を悩ませる。『ボーン・コレクター』は『骨収集家』でいいんだろうか、でも作品的には間違ってはいない。じゃあなんだスプレマシー?「かしましい」みたいなもんか。


 まったく。おばさん3人集まるとたちまちすぷれましくなるなあ。


 違う。


 彼は今時珍しくすぷれましい青年じゃないか、なあ母さん。


 違うな。


 調べてみたら「supremacy」は「優位、最高、至上、主権」などを意味する。


 骨最高!


 何だかこれでいい気がする。
 謎は解決スッキリしたけどたぶん『ボーン・スプレマシー』は観ないと思う。主役がマット・デイモンなのだ。
 マット・デイモンがすごくブタっ鼻だからだ。ンガンガ、ブーブー。