『ゴーグル』

jogantoru2005-04-04

 虐待。毎日のようにニュースで聞く言葉。もう親が自分の子供を虐待して殺してしまうなんてのは「ありがちな」事件である。悪い言い方をすれば。当たり前に起こる事件という認識があって、そういった報道を見ると「可哀想」とは思ってもどこかで「またかよ」で済まされてしまうくらいに日常化されている。悪い言い方である。
 俺は幸い幼少時に親から虐待を受けた記憶はないし、変な大人にイタズラされた覚えもない。ラッキーだ。そう、ラッキーだっただけだ。


 『いつか津波がくる。好きなものは助ける。嫌いなものは、全部流れろ』
 主人公のハルキはある日小学校に水中ゴーグルをかけて登校する。クラスのみんなはゲラゲラ笑ってるけど、それは潔癖症の父親から受けた虐待で出来た痣を隠すためのもの。しかしそんなハルキも同級生に暴力を振るってしまう。一方、突然仲間はずれにされた香月はハルキに心を開き、二人は打ち解けていく。そして。
 子供の世界ってのはものすごく狭いのにものすごく広くて、それは俺らが今見ている世界とは全然別物の世界だったなってことを思い出した。それはこの作品が子供の目線から描かれているからだと思う。「虐待はいけない」とか「いじめはやめよう」みたいな大人側の視点ではなく、その渦中にいる子供の視点から描かれている。どうしようもない漠然とした恐怖と不安。それを乗り切るために子供が子供なりにもがいていく様が痛くてリアルな感じがする。
 主役の二人がすごくいい。ハルキ役の子は「DISTANCE」(是枝裕和監督)のARATA伊勢谷友介を足して割ったような、歩き姿にも雰囲気のある子だった。


 監督の桜井剛さんはVeltga Film613のメンバーであり、俺も『ミーのヒビ』など出演させてもらっているんだけど、贔屓目とかでなく、そういうの抜きでいい映画だった。なんかね、いろいろセンチメンタルに考えさせられました。
 当分は下北沢TOLLYWOODにて公開してるようなので是非。

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