『21g』

「人は死ぬと体重が21gだけ減る」
 病院のベッドの上で起き上がることも出来なくなったショーン・ペンが言う。それは魂の重さだ。人間が体が死んで21gの魂が抜けて初めて本当の死を迎えるんだと思う。
 21g。ショーン・ペンは「チョコバーひとつ分」とか言ってたけど一円玉だと21枚。一円玉21枚じゃ何も買えないし財布に入ってたらすげえ邪魔だしコンビニで募金箱に入れるには一枚一枚手間だしそうすると賽銭箱にぶん投げるくらいしか出来ない。でも僕らは魂をぶん投げることなんて出来ないし、そんなちっぽけな物が求める方向に足を向け想いをよせる。その21gを満足させようと生き、その21gが求める場所に死にたい。
 ショーン・ペン演じる主人公は心臓に重大な病気を持ち臓器提供を待っている。そこに提供者が現れる。それは轢き逃げ事故で脳死となった男の心臓。新しい心臓を手に入れたショーン・ペンは提供者の妻(ナオミ・ワッツ)と出会う。そして同じくして轢き逃げ事故を起こした男(ベニチオ・デル・トロ)は苦悩する。3人は魂を求め合うかのように導かれ引き合わされていく。
 自分の人生なんてこんなもんだと諦めて生きていくこと、こんなもんだと諦めて死んでいくこと、それは生きているけど死んでいて、僕はそうでありたくないし、そう思ったら魂なんか抜けちゃって21g軽くなった抜け殻の僕は肉体の死に向かって日々を浪費するだけなんじゃないかと思うし、そんなの勿体ねーじゃんと思う。だから僕は魂が求めるがままに生きたいし魂が求めるがままに死にたいと思う。これすごく前向き。そうするのは難しいことなんだろうけどそこは諦めちゃいけないラインじゃないかと思う。

 久々の洋画でしかも字幕でしかも疲れてる深夜という環境で一度も寝ることなくビデオ巻き戻すことなく観終えたのはかなり面白かったんだと思う。前半は時間軸がごちゃごちゃで3人の現在と過去が切り取られていき、中盤からそれらが繋がっていく。つーか役者が3人ともすごく素敵。何よりショーン・ペンの奥さん役のシャルロット・ゲンスブールが超かわいかった。なまいきシャルロットも素敵になったもんだ。
 でもショーン・ペンって何かショーンと呼ぶほど親しくないしペンって呼ぶと間抜けだからやっぱりショーン・ペンってフルネームになっちゃってなんかもどかしい。真ん中の「・」打つの面倒くさい。