東京喜劇店

jogantoru2005-02-05


 うちの事務所の社長に誘われて六本木のBar,isn't it?で行わるインプロ(即興芝居)のライブ『Tokyo Comedy Store j』を観る。
 店は小洒落たバーで天井も高く、内装もきれいで『お芝居』というより『LIVE』という雰囲気。お客さんも所謂演劇好きみたいな人はいなくてちょっと小粋なオシャレ空間である。
 インプロってのは台本のない即興芝居のことで、その場でお題を出し、役者が即興で演じる。
 よく稽古で『エチュード』というのをやるんだけどそれに近い。エチュードというのは設定を与えられたアドリブ芝居で、どれだけ日本酒が好きかとか新潟に対する思い入れが強いかとか年に何回佐渡島に行くかとかっていうことから算出される地域への愛着度合いではなく、それはエチュードじゃなく越中度だ。俺は越中度が低いため佐渡島とか越中じゃないかもしれないし上杉謙信とか越中っぽい。分からんが。
 つまりはエチュードを発展させて客に見せるのがインプロってことになる。
 そこで俺は「はあ?」ってなる。お前ら金取って稽古に毛が生えたようなもん見せんのかよーとか斜に構える。

 まあ、面白かったんだが。

 即興というのは役者個人が頭良くなくちゃいけないし、対応能力もスピードも要求されるし、さらには場の空気が読めないといけないし、何よりセンスが要求される。
 センス。
 これ大事である。
 どんなに上手いこと流れに乗ってもそこで出てくる言葉のチョイスを間違えると「あーあ」となる。俺は言葉を大事にしたいと常々思ってるので余計にセンスのないアドリブ台詞とか聞くとがっかりなのである。かと言って俺が出来るかっつったら難しいんだけど。
 こういうのがあった。お客さんを舞台上に上げて役者達がそのお客さんのために即興で歌を歌う。お客さんからいくつかのキーワードを聞き出し歌に反映させるという趣向。
 そこで俺はガクーンとなる。
 舞台上に上がったのは女性で森さんという方(つーか、うちの社長だ)であり、いろいろ聞き出した中に「夢は?」「ビルを建てることです」。
 もうお分かりだと思う。
 森ビルじゃん。
 歌も佳境に入り俺は期待した。6人の役者がきれいな歌声で「♪森ビル!森ビル!森ビル〜!」と連呼するさまを。あわよくば既にちょっとにやにやしてた。
 が、
 歌わなかったんだよね。
 なんか普通にいい歌で終わった。
 がっかり。
 「森」と「ビル」って単語が出た時点で『どうぞ打ってください』とど真ん中スローボール投げられてんのに打たないんだもん。で、次のカーブかなんかをそつなくヒットにしてるだけみたいな。ホームラン王になりたくないんかいと。ヒットの延長はホームランだけど、今ヒット狙いだったよね、とりあえずヒットでよしとしたよね。
 まあ森ビルのネタは単純に俺の好みかもしれないけど、やはり金払ってる時点で思い付きプラスαを客としたら求めてしまうものである。

 まあ、全体的には面白かったんだが。

 ただ即興芝居だけに役者の素が見えるわけで、そういう時は衣装だけでもちゃんと揃えて欲しい。私服のセンスがないだけで「あー、あのダサい人は何であんな服で人前に出てるんだろう、他の服全部燃やされちゃったのかな、大丈夫かな、あ、しかも女の子なのにインディアンな顔と髪型してるな、インディアンの部族にいるみたいだもんあの子、あの子本当は椎名誠と大地を駆けて椎名誠と一緒に豆だらけのスープを飲んで椎名誠がくれたチョコの銀紙を太陽にかざしてキラキラさせたいんじゃないかな」とか考えてしまう。
 役者の素は芝居の部分だけで充分である。わざとダサい格好をして、敢えてマイナスポイントからあたしは這い上がるの!みたいな向上心があるのなら捨てた方がいい。明らかにインディアン子(仮称)は舞台に上がった瞬間から隣にいたかわいくてオシャレな子に歴然と差を付けられてたので。そしてインディアン子(仮称)は言葉のチョイスがなってなかった。頑張れインディアン子。そしてちょっとオシャレとか考えろ、女の子なんだから。

 まあ、全体的にはすごく楽しかったですマジで。