『タイガー&ドラゴン』

「タイガー、タイガー、じれっタイガー!」ってわけで、宮藤官九郎脚本のスペシャルドラマ『タイガー&ドラゴン』である。
マンハッタンラブストーリー』以来の満を持してのクドカン作品。しかも主演は『IWGP』のマコトと『木更津キャッツアイ』のぶっさんときたもんだ。すごい。しかしながら一時のクドカン脚本作品大氾濫期にはやや食傷気味にすらなってて、今回も「なんとなくつまらないかもしれない」っていう不安を抱いてたんだけど、オープニングからクレイジーケンバンドの『タイガー&ドラゴン』が流れた時には鳥肌ザワワですぐさまキャッキャとテレビにかぶりついてた。
「面白い話がしてえ」と噺家になる話下手のチンピラ・トラジ(長瀬智也)と、天才噺家の道を捨て裏原宿でダサい服だらけのショップを開いている“リュウジ=岡田准一”、すなわちタイガー&ドラゴン。師匠(西田敏行)の一番のネタである「三枚起請*1」を教わるためにトラジはリュウジ(実は師匠の次男坊)と出会い、リュウジの友達チビTの失恋話を発端にして、チビTが惚れたメグミ(伊東美咲)という女に同じように振り回された男が五人いましたっつう「現代版三枚起請」ならぬ「五枚起請」に巻き込まれていく。
なんて簡単にまとめられちゃうほど簡単じゃなくて大ネタ小ネタ満載のクドカンワールド全開でラストにトラジがオチを決める時には感動すらしちゃってまた鳥肌ザワワ。
ほんと見事な脚本だった。そしてそれを演じる役者陣もまた見事。ぶっさんそのまんまの岡田くんの「まだオチてないでしょ」ってワクワクしてる顔なんかすごくいい。阿部サダヲは相変わらず抜群で安田大サーカスのネタやってるし、伊東美咲は方言だったりおバカな役だと案外大丈夫だったりすることも判明した。やっぱりいい台本はいい役者がやらないともったいない。「台本は面白いんだけどねー」なんて言われるのが一番切ないし、やるせないもんだ。
しかしこのドラマ。このまま一気に連続ドラマにならないものか。毎回落語のネタを使って二人がいろいろ騒動に巻き込まれてっていう話でいかがなものか。やらないかなあ。やってほしいなあ。
それにしてもクドカンは落語好きなのかな。『GO』でも窪塚くん落語聞いてたし。つうか落語やりたいっていう若者が増えるんじゃないだろうかとか思いつつ、俺もだ。流されやすいのだ。

*1:三枚起請サンマイキショウ
起請というのは愛を誓って取り交わす証文のこと。
大工の棟梁と猪之さんと清さんの三人が同じ吉原の花魁から同じ起請をもらっていたと言うことがわかり、大騒ぎになる。これはこっぴどく懲らしめてやれということになり、3人そろって花魁の元に。3人は花魁を責めるが何のその。彼女は開き直る始末。怒った3人衆。
「嘘の起請を書くと熊野でカラスが3羽死ぬってェ言うだろう。罪なことすンねぇ!」
と言われた花魁。
「あたしはね、嫌な起請をどっさり書いて、世界中のカラスをみんな殺したいんだよ」
「みんな殺して、どうすんだい」
「カラス殺してあたしゃ朝寝がしてみたい」
とまあこんなお話。