『雲のむこう、約束の場所』
いつも映画館で予告だけは見てて「あーやばいな、これ俺絶対好きだわ。泣けるわ」とか思いつつ「でもアニメですもん、劇場では観れませんやん」とDVD化を待ち焦がれてたりした。
柄にもなくアニメってみたけど、いやーよかった。勇気出して借りてよかった。人間たまにはキャラにないことして涙するってのも乙なもんである。疲れたハートをキュウンと掬い上げてくれるような感じである。
南北に分断統治された、もう一つの戦後の日本。北海道は≪ユニオン≫という国?に占領されていて、そこには天まで伸びる謎の巨大な搭がそびえている。
津軽海峡を挟んだ青森に住むヒロキ(吉岡秀隆)とタクヤ(萩原聖人)は彼方に見える搭までいつか飛びたいと、小型飛行機ヴェラシーラを組み立てている。二人は同級生のサユリ(南里侑香)に想いを寄せていて、いつか三人でその搭に辿り着くことを夢見ていた。
しかし、サユリは夏休みになると突然東京に転校。ヴェラシーラの組み立ても中途のままになってしまう。
数年後。タクヤは政府の研究施設に身を置き、サユリへの憧れを打ち消すように「平行世界」と「塔」の研究に没頭していた。一方で目標を喪失したまま東京での生活を送るヒロキは、ある時期から頻繁にサユリの夢を見るようになる。
実はサユリは原因不明の覚醒障害を発病、15歳の夏から病院で眠り続けていた。
ヒロキはサユリを永遠の眠りから救おうと決意するが、サユリの眠りには搭の秘密が隠されていることを知る。
「サユリを救うのか、それとも世界を救うのか―」
果たして3人は、いつかの放課後に交わした約束の場所に立つことができるのか……。
なんでしょう、このピュアな感じは。そんなん泣きますもん。愛に向かって突き進みますからヒロキくんは。しかもそのヒロキくんの声は吉岡秀隆くんですよ、純くんです。もう、ぼそりぼそりの一言がシェチュネェのなんのって。
つーか吉岡くん。幾つになっても吉岡くんは吉岡くんで吉岡さんにはならない。俺ん中では「ちくしょう、ちくしょう」って電信柱を殴っている純くんの姿が今でもだぶる。にしても、この話も青森だし何故に吉岡くんには東北なキャラが似合うのだ。だからDrコトーには違和感あったな。吉岡くんには海より雪、太陽より曇天がよく似合う。
友達のタクヤ役の声は萩原聖人。冬ソナのヨン様の声やって以来、すっかり声優業にも勤しんでらっしゃる。つか上手い。全然違う人みたいだもん。声優みたいだもん。
最近どうも自分の中がギスギスしてるというか、刺々しいというか、ささくれ立っていたんで、こういうストレートに「俺は愛のために猪突猛進するのだ」みたいなのを見せられると、ベタな物言いだけど、本当心が洗われる思いだ。あと窪塚洋介の「ランドリー」とかね。
もう回りくどいことしてないでストレートでいいじゃんよ。
そんな風に思う。
しかもこの≪南北分断された日本≫という異世界。それは村上龍の「五分後の世界」にもあったようなありそうでなさそうなリアルな異世界。それと対をなすようなサユリの夢の中にある荒野にそびえる無数の高い搭。その高い所に皆一人で居て、そこは孤独で孤高の場所。他人には相容れない場所、という心の異世界。どちらも極端な世界だけど、でもそれは全然想像し得る世界であって、そこに自分の身を置いてみた時にどうするんだろうか。果たして俺は愛を取るんだろうか、世界を救うんだろうか、なんていうヒーローの苦悩みたいなものを真摯に考えられたりする。
ま、俺は愛を取るけど。ラブ万歳だもの。
と言っておこう。
いや、きっと監督の新海誠もラブ万歳なんだと思うよ。
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