九代目林家正蔵襲名披露興行

jogantoru2005-03-30

 芝居も終わったので念願の林家正蔵襲名披露を観に上野の鈴本演芸場へ。
 正式タイトルは『落語界一大イベント大名跡襲名!林家こぶ平改め九代目林家正蔵襲名披露興行』である。長い。これが「美人OL落語刑事」とか「襲名披露温泉殺人事件」とかにマイナーチェンジすれば火サスのタイトルでもおかしくないくらいの長さである。
 落語界一大イベントというだけあってチケットは即日完売、しかし何としても観たい寄席だった(と言っても寄席を観るなんて初めてである)ので、仕事を切り上げて立ち見席の販売開始時刻の17時過ぎに鈴本演芸場に到着し立ち見券ゲット。劇場前には石原軍団からの樽酒に所ジョージからの幟と二木ゴルフからの幟。正蔵こぶ平と二木ゴルフはやはり切って切れない関係なのだ。頭の中には「♪スウィング、スウィング、スウィング、スウィング、ヘイッ二木!」と「二木二木二木二木、二木の菓子!」の2つが交互に流れまくる。
 連れと合流し中に入るとちょうど春風亭小朝師匠の高座の最中。葬式中にみんなが故人を偲んで歌合戦をしているという噺でいきなりから笑えた。初めての寄席で馴染めるか不安だったが最初がTVで見知った小朝師匠で良かった。すんなり入れた。
 続いて『となりのトトロ』なるかわいい芸で締めた三増紋之助の曲独楽を挟んで綾小路きみまろの漫談。何となく「過去の人」的なイメージがあったけど、客席のほとんどは中高年というきみまろにとってはホームゲーム。しかも久々なのでめちゃくちゃ面白いし、やっぱり巧い。
 そして口上前のトリは入船亭扇橋師匠。何歳なんだろうか、かなりの高齢でぷるぷる震えているし、声がすごく小さい。ちょっと笑いが起きるともう聞こえなくなる。扇橋師匠から観てたら挫折していたかもしれん。
 扇橋師匠が終わると休憩に入り「やっぱきみまろ面白れー」などと話していると、目の前に現れたナイスミドルが声をかけてきた。
「僕たち口上が終わったら帰るんで良かったら座ってみるかい?」
 見るとナイスミドルの手にはチケットが。そしてナイスミドルとナイスミセスの笑顔。「マジすかー!」と座ってみると8列目。ラッキラッキーである。寄席にあり得ない片モヒカンみたいな俺に落語界の明日を感じたんだろう。ともかくナイスミドル&ミセスに感謝していると『襲名披露口上』が始まり、仕切るのは小朝師匠、口上には扇橋師匠と橘屋圓蔵師匠。橘屋圓蔵師匠といえば「メガネ曇っちゃう」のCMの人だ。思わぬところでキャー!となる。残念ながら圓蔵師匠のメガネは曇ってなかったが。そして3人の真ん中に林家正蔵師匠が深々と頭を伏している。正蔵師匠は全く顔を上げない。「あー見たい、顔が見たい」とヤキモキしつつ「何故にこぶ平をそんなに観たがるんだ俺?」という思いを振り払う。こぶ平でなく正蔵なのだ。もう別物である。ヒロミに罵倒されているこぶ平でも、『とぶくすり』で極楽山本こぶ平に扮して「ぽっかりぽかぽか日曜日、サンデー!」ってやってたのとも違うのである。ちなみにヒロミからのお祝いは届いてなかった。否、送ったけど飾られなかっただけだと思う。もう正蔵>ヒロミだし、ヒロミックス>ヒロミなのである。ちょっとかっこいいのである。さらには短髪を白くしている小朝師匠もだんだんとかっこよく見えてきて『ブレードランナー』のルトガー・ハウアーのよう。あり得ない見間違いである。もうすっかり落語の虜になってるっぽさがこの見識からも伺える。
 口上も終わり、紙切り林家正楽師匠を挟んでお目当ての林家正蔵師匠の登場。場内割れんばかりの喝采である。噺はかつて二度しか高座に上げたことのないという『ねずみ』。その内容は「虎屋という大きな旅籠を乗っ取られ、鼠屋という小さな宿屋を営んでいる亭主に、左甚五郎が彫ってやった鼠が動き、評判になる。」というもの。下げをイマイチ覚えてなかったので面白かった。まあ、子供の声とか「わー!」とか声出すとまんまこぶ平ちゃんなんだけど、噺の運びといいリズムといい「上手いわー」と初落語なんだけど感心しきりで鈴本演芸場を後にした。
 今春から「タイガー&ドラゴン」も放送開始になるし、今年は落語の一大ムーブメントが起きるに違いない。

 
 こんなお花もありました。ええ、この前までタチヒロチって役でしたから。