そして僕は途方に暮れる
写真は昨夜1時前に自宅前で撮影されたものである。昨日は長津田で稽古があり22時の電車に乗り、通常ならば三軒茶屋から乗り換え23時半には帰宅しているはずだ。
何故裸足なのか?何故1時なのか?空白の1時間半に何があったのか?
そんな一夜の転落人生を検証してみたい。
九州が局地的大雨に襲われた昨夜、関東地方も豪雨だった。ハード豪雨である。
早くに稽古を終えた僕は打ち合わせがてらASSH主宰まつだ壱岱氏宅にて櫻井氏と共にご馳走になっていた。そのうち雨も弱まるだろうと思っていたが雨足は強まるばかり。あまり長居もよくないと駅に向かったのが22時前。櫻井氏はバイクである。あらら可哀想にと思いつつ別れた途端、
傘の骨が折れた。
ぎゃあ。さすが100円傘。しかし差して差せないわけじゃないから駅まで歩いた。
電車に乗って勤勉な僕は読書なぞしながら三軒茶屋で乗り換えまた読書。余裕である。三軒茶屋から下高井戸まで行き電車を降りようと一歩踏み出した。
ブチン。
サンダルの鼻緒が切れた。
履いていたのは買ったばかりのアジアな感じのサンダル。その編み込んだおしゃれっぽい鼻緒がずっぽり抜けてる左足。
まずい。
とりあえず京王線まで歩いたが少し歩けばサンダルは抜けた鼻緒が足首に引っかかってるだけという状態。もう全然靴的な役割を果たしてない。
これは電車乗るわけにはいかん。
タクシーだ。
そう思い下高井戸の駅で財布を見る。
千円札が一枚。
しまった。お金おろすの忘れてた。仕方ないのでコンビニのATMでおろそうと歩き出した。向かうは甲州街道沿いのコンビニだ。すぐにタクシーが拾える。しかしながら、やはり左のサンダルはすぐにベローンと脱げてしまう。仕方ないから親指と人差し指で鼻緒を摘んで歩く。
足が攣った。
豪雨である。どうしようもないから雨水溢れた路地をサンダル引きずりざぶざぶと歩いてコンビニに到着。この時点で傘は完全に使い物にならなくなる。
金おろしてタクシーしか手段はなくなった。恥ずかしいからサンダルを必死に摘んでATM機の前まで行き、銀行のカードを挿入。
『ただいまの時間はご利用になれません』
えー!意味ないじゃん!全然コンビニエンスじゃないじゃん!と狼狽するも気付く。あ、郵便貯金なら大丈夫だ。だって国営だもん。国は国民を守ってくれるんだもん。
『ただいまの時間はご利用になれません』
民営化されちまえ、コノヤロウ!
撃沈した僕は違うコンビニに向かうことにするが傘はもう使えない。サンダルは今にも崩壊寸前。
見ると傘は630円のしか置いてない。高い。しかし買うしかない。片やサンダルはキティちゃん柄のものしかない。かわいい。でも高い。
悩んだ末に傘630円だけを購入。キティちゃんサンダルなんて履かないのだ。枯れても武士なのだ。
仕方なくサンダルを引きずりながら駅まで戻りさらに逆方向のコンビニへ。歩きにくいせいかすごく遠い。
苦労の甲斐あってお金をおろせたのだが、こっちの通りにはタクシーが全然来ないのだ。
しばしシンキングタイム。
カッチカッチカッチカッチ…、チーン。
サンダル買って歩こう。もしくは駅まで歩いて家の方まで電車に乗ろう。でも駅まで歩くのも面倒くさいな。などとブツブツ言いながら気付く。
サンダルが売ってない。
なんだよ、全然コンビニエンスじゃないじゃん!嗚呼、今になってキティちゃんサンダルが恋しい!
しかしながらそんな距離歩けない。つーかやだ。
タクシーは来ないし、サンダルは切れている。もちろん雨足は弱まる気配すらない。
途方に暮れた僕はそして決心。いや、自棄全開。
僕は雨の中家まで歩き出した。家までは二駅分ある。構うもんかこんちくしょうめ。僕はざぶざぶ歩きながら人通りがなくなったのを見計らって左足首に引っかかってるサンダルを脱ぎ捨てた。
ざぶざぶざぶ。
えーい焦れったい。
右足のサンダルも脱ぎ飛ばした。
ざぶざぶざぶざぶ、ざぶざぶざぶざぶ。
ちょっと気持ちいい。意外と道路には水が溢れているがその下のアスファルトはほんのり温かい。温かいよマザーアース。みんな地球の子供だもんね。道行く人は僕に怪訝な視線を送るけど靴という足枷を捨てた僕には怖い物はない。もう靴って何?みたいになってる。考えてみれば裸足で雨の中ざぶざぶ歩くなんてなかなか出来ない。むしろラッキー。と自分に言い聞かせながら歩くも頭の中に流れるのはスチャダラパーの『ついてね〜、マジでついてね〜』って曲で、結局家に着いたのは午前1時近くになっていた。
それがこの話の顛末です。いつまた裸足で歩くかもしれないので吸い殻のポイ捨てはやめようと思った。全国の裸足を代表してみなさんにもポイ捨てはやめていただきたい。
追伸。櫻井様。おかげさまで台本がすべてずぶ濡れになり捨てられたエロ本みたいになってます。